約 3,317,849 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1206.html
Report.07 長門有希の幸福 わたしの寝室は、彼女の『今の』希望に応えることはなかった。 「……ほんま、何(なん)もないなぁ……」 【……ほんと、何もないわね……】 和室、布団一式。以上。 『実用本位』『質実剛健』 人間の言葉で表現するとそのように形容される。『寝』るための『室』と書いて『寝室』。その部屋は『寝る』ことに特化した、それ以外の機能を一切廃した潔い部屋。 「まぁ、この方が有希らしくてええかも。」 【まぁ、この方が有希らしくて良いかも。】 それはあなたが望めば……またエラーが発生しそうなので、考えるのはやめておく。 彼女は布団に入ると、布団の自分の横の部分をぽんぽん叩きながらわたしを呼んだ。 「さ、有希♪ 早(はよ)こっち来(き)ぃ♪」 【さ、有希♪ 早くこっちにいらっしゃい♪】 彼女の顔はにやけている。わたしは、これから彼女にされるであろう行為を想像し、体温が上がることを感知した。 「今日はうんと可愛がったげるからな♪」 【今日はうんと可愛がったげるからね♪】 わたしは覚悟を完了した。 ………… ……… …… … 今日はもう寝るだけとなった。 「はぁ……はぁ……すごい……はぁ……はぁ……」 彼女は肩で息をしながら言う。 「まさかあんたが、あんなにすごいことしてくれるなんて……」 今度のわたしは、されるがままではなかった。それなりに、彼女の行為に応えたつもり。 「最後の最後で……ええもん見せてもろたわ。」 【最後の最後で……良いもの見せてもらったわ。】 「……けだもの。」 「うっ……! そ、それじゃ、有希! おやすみっ!!」 それだけ言ってわたしに背を向けると、すぐに彼女は寝息を立て始めた。 (すう、すう……) 彼女の寝顔は、とても安らかだった。先ほどまでの激しさや、ここ数日の弱りきった表情はどこにも見当たらない。ようやく彼女は心から安心できたのだろう。できれば『会話』によって、彼女をそのような状態に誘導したかったが、元々わたしの会話能力は低く設定されている。会話では目的達成は困難だっただろう。 また人間には、言語によらない意思疎通手段も備わっていて、時にそれは、発達した言語による意思疎通に勝ることもある。今の彼女にとっては、非言語的意思疎通が必要だったのだろう。 今日の彼女との一件で、初めて『実感』したことがある。 彼女は……『愛情』に『飢えて』いた。人との『ふれあい』を求めていた。そして、できればその相手を『彼』に求めていた節があるが、『彼』は異性。『彼』に『ふれあい』を求めることは、そのまま性交を求めることになってしまう。彼女は、そこまでの関係になることは望んでいなかった。 そこで、『SOS団随一の万能選手』にして『無口だけど頼れる団員』であるわたしを選んだのだろう。わたしの肉体は女性、彼女から見て同性に設定されている。間違いは起こらないと判断したのだろう。 ……結果的に、間違いは起こった。だが、反省も後悔もしていない。他に方法はいくつもあったが、結果的に相当効率の良い方法に辿り着いた。おかげでわたしは、人間の感情をより深く実感することができた。 そしてわたしは、彼女のことを好きになりだしているらしかった。 以前読んだ本に、このような内容のものがあった。 ――最初は単なる好奇心だった。 ――毎日なんとなく眺めているうちに、だんだん気になりだした。 ――そして気が付けば、ただの気になる人から、愛しい人に変わっていた。 ――いつのまにか、恋に落ちていた……気が付いた時には、既に。 わたしは、任務として、彼女をずっと観測してきた。それがわたしの存在理由だから。 そしてSOS団に取り込まれ、彼女の間近で彼女を観測しながら時を過ごしてきた。生み出されてからさほど時間が経っていないわたしにとって、彼女やSOS団と共に過ごした日々は、人間に例えるなら『人生の大半』を費やした時間になる。 そこでわたしは、常に彼女を見続けていた。最初は任務として淡々と。それからは、一万回以上繰り返す八月の二週間にうんざりしたり、何をしても『彼』の庇護を受ける彼女達を羨ましく思って暴走し、世界を改変したりした。 そういえば『彼』のことも気になる存在になっていたが、それは人間で言う異性に対する思いとは違っているように思える。似た思いを検索すると……それは、娘が父親に感じる思いに似ているよう。『彼』がわたしに向ける眼差しも、どちらかというと父親が愛娘に向けるそれと同種のように思える。 そして『彼』が彼女に向ける眼差しは、複雑過ぎて近い感情が推定できない。もっと観測が必要だろう。 わたしは、もしかしたら、『彼』を通して、やはり彼女を見ていたのかもしれない。気になる彼女と、気になる『彼』を通して見た彼女。 わたしは彼女の寝顔を近くでまじまじと見つめて言った。 「……だいすき。」 以前、夏の孤島の王様ゲームで言わされた台詞。しかし今は全くその意味が違う。そこにはわたしの、自覚したばかりだが精一杯の『感情』がこもっている。 彼女の耳には届いただろうか? 届かなくても良い。 わたしは、わたしの『素直な想い』を言葉にした。それだけでも十分だった。 そしてわたしは、ふと思い当たった。 言語による情報伝達には、齟齬が発生する。言語化できない想いや概念は、余りにも多い。人間は、言語化できない想いを非言語的手段を使ってでも、伝えようとする。 伝えたい、伝わらない。 その『もどかしさ』『不完全さ』が、人間を、この星に発生した知性を、発達させたのではないだろうか。 もどかしいから、不完全だから。伝えたいのに伝わらないから。無知で無力だから。 人は、工夫をする。より良い明日を願って。 それこそが、自律進化なのではないだろうか。 有機生命体には、寿命、すなわち耐用年数が存在する。例えば人間なら長くても100年程度。しかも生まれてから十数年間は、心身の発達のために費やされ、新たな思索を行うことはほとんどない。 そして、伝承された知識を身に付け、それを使いこなすまでにさらに数十年掛かる。伝承された知識を次の世代に伝承しつつ、新たな知識を身に付け、新たな知見を得ようとするが、そうこうしている間に心身は衰え、思考も行動も停滞していく。そして最後は生命活動を停止する。実質的に新たな知見を生み出す時間は、数十年しかない。 ここに有機生命体に宿る知性の限界がある。有限の時間という制限。 知的探求は次の世代に託すしかないが、新たな世代は毎回知識も経験も……持っている情報が何もない状態から始まるため、準備が整うまでに十数年、今までの成果の引き継ぎに数十年、情報量が増えると一定量以上は引き継ぎきれない。だから、他にも有機生命体に知性が宿る例はあっても、それほど高度には発達できなかった。 しかし、この星の知性は、あることに気が付いた。 情報をいつまでも自分の体に蓄積できないのなら、情報を外部に保存すれば良い。そして外部化した情報を複製し、広く流布する。更には流布された情報に付加情報を付けるなどして、情報を増やしていく。 こうして人間社会全体で情報を蓄積し、増加する。誰でも情報に触れることができるようにしておけば、誰かがその情報を基に新たな情報を生み出し、それらを基にまた新たな情報を生み出す者が現れ、情報の生成が連鎖していく。 そう、例えば『本』。 人間は、『本』という形で自分の得た情報、自分の感情その他を流布し、社会に残す。人間が情報の重要性に気付き、情報の保管……『本』の保管に気を付けるようになると、情報の散逸や消失が減少していった。 情報生命体である情報統合思念体による情報処理に比べれば、遥かに遅い、稚拙な仕組みだが、しかし人間は確かに、有機生命体に宿る知性の限界を打ち破った。ほんのわずかずつでも積み重ねていけば、長い時間を掛ければいずれは人間も、情報統合思念体レベルの知性を獲得することになるだろう。 一つの世代では不可能なことも、何度も世代を重ねることで可能にする。世代間の引き継ぎは、情報を外部化し、共有することで解決する。人間は、世代を越え、時を越えて、築き上げてゆく。 それが人間の力。人間の進化する力。……新たなものを生み出す力。 そう。涼宮ハルヒほどではないにしても、人間は新たなものを生み出す力を持っている。その力は単独では微々たるものだが、集団となり、力を合わせることで大きくなる。 それでは情報統合思念体はどうだろうかと考えたところで、わたしも眠くなった。もう寝よう。 「おやすみなさい……」 わたしは彼女の額……ではなく唇に、そっと口付けをした。 おやすみなさい、涼宮ハルヒ。わたしの大好きな人。 その夜、わたしは夢を見た。 夢とは、活動時間に得た情報、『記憶』を整理統合するために睡眠中に起きる脳の生理現象。 わたしは端末であって厳密な意味では生命体ではないので、本来は夢を見ることはない。情報はすべて情報統合思念体側に送られ、処理されるので、端末側で情報を整理する必要がないから。 しかしわたしは、今は情報統合思念体との接続を余り行っていない。そのため、端末側で情報を整理統合する処理が必要となり、結果、夢を見るようになった。 それは人間が見る夢と同じで、脈絡などを無視した意味不明な映像として認識されることが多い。そして多くの場合、目覚めたときには内容は覚えていない。せっかく情報を整理したのに、その途中経過をいつまでも記憶していては意味がないから。 しかし物事には例外が付き物で、たまにではあるが、起きてからも夢の内容を鮮明に記憶していたり、夢で見た内容が現実に発生したりする。それもまた人間と同じだった。ちなみに、こうした性質は人間にとって、夢に対する好奇心を掻き立てるものとなっている。 この時わたしが見た夢も、そんな鮮明に記憶している夢の類だった。夢の内容は長くなるので割愛する。機会があれば、別途報告することにする。 翌朝。光が動く気配で目が覚めた。わたしは目を開ける。視界を彼女の顔が埋めていた。彼女と目が合う。 「!?」 彼女は驚愕した顔で、慌ててわたしから顔を離した。見る見る顔が真っ赤に染まっていく。唇に暖かい湿った感触が残っている。わたしは、彼女が何をしていたのか理解した。 「お、おはよっ! 有希!」 「…………」 わたしはゆっくりと体を起こす。 「あふ……」 あくびが出た。彼女になら、この姿を見せても良いと感じているのだろう。 「うっは……有希のあくび、めちゃめちゃ可愛い……寝顔もえらい可愛かったし……」 【うっは……有希のあくび、めちゃ可愛い……寝顔もえらい可愛かったし……】 「寝顔を見ていたの。」 「!? え、あ、う……し、しゃーないやんかっ! 起きたら有希はまだ寝てたし! 寝顔がめちゃめちゃ可愛くて、その、つい見とれてたら、思わずチュッ! て……」 【!? え、あ、う……し、しょうがないじゃない! 起きたら有希はまだ寝てたし! 寝顔がめちゃ可愛くて、その、つい見とれてたら、思わずチュッ! て……】 「キスもしたの。」 「うわわわわ! そ、それは言葉のあやで、その、決してやましいことは……」 しどろもどろになる彼女。たまに見られるが、珍しい部類に入る。その原因がわたしであることに、少しおかしさを感じた。 そしてわたしは、ふと、いたずら的なことを思いついた。わたしも変わったものだと思う。わたしは、まるで朝比奈みくるのようにおろおろあたふたしている彼女に顔を寄せる。 「!? ゆ、有希?」 ちゅっ。 わたしは彼女の唇に口付けをした。彼女は首まで真っ赤にした。 「おはよう、ハルヒ。」 「!?」 「あんたも、めっちゃ可愛いで。」 【あんたも、めちゃ可愛いわよ。】 「!?!?」 彼女は、照れと驚愕と愕然とが入り混じった複雑な表情で、顔を真っ赤に染めていた。 「っ、くは……心臓が止まるか思(おも)た……」 【っ、くは……心臓が止まるかと思った……】 彼女は荒い息を整えながら、 「今、『ハルヒ』って……それに、その言葉遣い……」 「あなたにだけ。」 わたしは答える。 「たまになら、ハルヒにだけ、見せたってもええわ。」 【たまになら、ハルヒにだけ、見せたげても良いわ。】 わたしは微笑みながら……そう、『微笑みながら』言った。 「ハルヒは、わたしの特別な人やから。」 【ハルヒは、わたしの特別な人だから。】 彼女はびくんと体を震わせた。 「有希……その顔でその台詞、反則……雷に打たれたかと思(おも)たわ……」 【有希……その顔でその台詞、反則……雷に打たれたかと思ったわ……】 「そう?」 「あーもう! 嬉しいこと言ってくれるやないの!!」 【あーもう! 嬉しいこと言ってくれるじゃないの!!】 彼女が抱きつき、そのままわたしは押し倒される。 「朝から……けだもの。」 「ちゃ、違(ちゃ)うっ! 朝は普通にいちゃいちゃするだけ!!」 【ち、違うっ! 朝は普通にいちゃいちゃするだけ!!】 「……どのくらい?」 「18禁にならへん程度にっ!」 【18禁にならない程度にっ!】 「やっぱりけだもの……」 わたしの口は、彼女の口で塞がれた。舌も挿入され、口の中を蹂躙される。朝から濃厚。 『あふっ……んむっ……』 しばらくして、彼女が唇を離した。二人の唇の間にきらきら光る糸が引いていた。 「朝は……静かに抱き合っていたい気分。だめ?」 わたしは彼女の顔を上目遣いで見上げながら言った。 「有希、その体勢でその仕草で頼みごとしたら、逆効果やで?」 【有希、その体勢でその仕草で頼みごとしたら、逆効果よ?】 彼女は怪しい笑みを浮かべながら言った。 「そんな可愛くおねだりされたら、またあたしに火ぃ付いてまうやんかー♪」 【そんな可愛くおねだりされたら、またあたしに火が付いちゃうじゃない♪】 わたしは彼女に抱きすくめられる。 「でも、まあ……今はあたしも、ゆっくり抱き合いたい気分かな? でも、キスまではええやんな?」 【でも、まあ……今はあたしも、ゆっくり抱き合いたい気分かな? でも、キスまでは良いわよね?】 「キスは、いい。わたしもしたい。」 今日は土曜日。最近、不思議探索は休止中。時間はいくらでもある。 わたしは、休日の朝の心地よさと、抱き締め合った彼女の暖かさに身を委ねることにした。 『幸せ』 人間の言葉で表現するなら、この言葉がもっともふさわしいと思った。 「だいすき。」 「あたしもや……」 【あたしもよ……】 お互いの耳元で囁きあう。本当にしあわせ。 窓からは、爽やかな朝日が差し込んでいた。わたし達の行為とは正反対なほど爽やかな朝だった。 『今日は何をしようか』 彼女を抱き締め、彼女に抱き締められる幸せを感じながら、わたしはぼんやりと、そんなことを考えていた。 【追加報告:Extra.3 長門有希の夢想】 ←Report.06|目次|Report.08→
https://w.atwiki.jp/takeei/pages/27.html
BOOK(-1997) BOOK(1997-1999) BOOK(2000-2001) BOOK(2002) BOOK(2002-2004) BOOK(2005) BOOK(2006-2007) BOOK(2008-) [2008-B-53] 植物生態学と地生態学を巡って.日本環境アセスメント協会編「エコロジストの時間」東海大学出版会 130-133 エコロジストの時間 [2008-B-54] 高橋日出男・小泉武栄編著「自然地理学概論」朝倉書店 自然地理学概論 (地理学基礎シリーズ)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1239.html
Report.07 長門有希の幸福 わたしの寝室は、彼女の『今の』希望に応えることはなかった。 「……ほんま、何(なん)もないなぁ……」 【……ほんと、何もないわね……】 和室、布団一式。以上。 『実用本位』『質実剛健』 人間の言葉で表現するとそのように形容される。『寝』るための『室』と書いて『寝室』。その部屋は『寝る』ことに特化した、それ以外の機能を一切廃した潔い部屋。 「まぁ、この方が有希らしくてええかも。」 【まぁ、この方が有希らしくて良いかも。】 それはあなたが望めば……またエラーが発生しそうなので、考えるのはやめておく。 彼女は布団に入ると、布団の自分の横の部分をぽんぽん叩きながらわたしを呼んだ。 「さ、有希♪ 早(はよ)こっち来(き)ぃ♪」 【さ、有希♪ 早くこっちにいらっしゃい♪】 彼女の顔はにやけている。わたしは、これから彼女にされるであろう行為を想像し、体温が上がることを感知した。 「今日はうんと可愛がったげるからな♪」 【今日はうんと可愛がったげるからね♪】 わたしは覚悟を完了した。 ………… ……… …… … 今日はもう寝るだけとなった。 「はぁ……はぁ……すごい……はぁ……はぁ……」 彼女は肩で息をしながら言う。 「まさかあんたが、あんなにすごいことしてくれるなんて……」 今度のわたしは、されるがままではなかった。それなりに、彼女の行為に応えたつもり。 「最後の最後で……ええもん見せてもろたわ。」 【最後の最後で……良いもの見せてもらったわ。】 「……けだもの。」 「うっ……! そ、それじゃ、有希! おやすみっ!!」 それだけ言ってわたしに背を向けると、すぐに彼女は寝息を立て始めた。 (すう、すう……) 彼女の寝顔は、とても安らかだった。先ほどまでの激しさや、ここ数日の弱りきった表情はどこにも見当たらない。ようやく彼女は心から安心できたのだろう。できれば『会話』によって、彼女をそのような状態に誘導したかったが、元々わたしの会話能力は低く設定されている。会話では目的達成は困難だっただろう。 また人間には、言語によらない意思疎通手段も備わっていて、時にそれは、発達した言語による意思疎通に勝ることもある。今の彼女にとっては、非言語的意思疎通が必要だったのだろう。 今日の彼女との一件で、初めて『実感』したことがある。 彼女は……『愛情』に『飢えて』いた。人との『ふれあい』を求めていた。そして、できればその相手を『彼』に求めていた節があるが、『彼』は異性。『彼』に『ふれあい』を求めることは、そのまま性交を求めることになってしまう。彼女は、そこまでの関係になることは望んでいなかった。 そこで、『SOS団随一の万能選手』にして『無口だけど頼れる団員』であるわたしを選んだのだろう。わたしの肉体は女性、彼女から見て同性に設定されている。間違いは起こらないと判断したのだろう。 ……結果的に、間違いは起こった。だが、反省も後悔もしていない。他に方法はいくつもあったが、結果的に相当効率の良い方法に辿り着いた。おかげでわたしは、人間の感情をより深く実感することができた。 そしてわたしは、彼女のことを好きになりだしているらしかった。 以前読んだ本に、このような内容のものがあった。 ――最初は単なる好奇心だった。 ――毎日なんとなく眺めているうちに、だんだん気になりだした。 ――そして気が付けば、ただの気になる人から、愛しい人に変わっていた。 ――いつのまにか、恋に落ちていた……気が付いた時には、既に。 わたしは、任務として、彼女をずっと観測してきた。それがわたしの存在理由だから。 そしてSOS団に取り込まれ、彼女の間近で彼女を観測しながら時を過ごしてきた。生み出されてからさほど時間が経っていないわたしにとって、彼女やSOS団と共に過ごした日々は、人間に例えるなら『人生の大半』を費やした時間になる。 そこでわたしは、常に彼女を見続けていた。最初は任務として淡々と。それからは、一万回以上繰り返す八月の二週間にうんざりしたり、何をしても『彼』の庇護を受ける彼女達を羨ましく思って暴走し、世界を改変したりした。 そういえば『彼』のことも気になる存在になっていたが、それは人間で言う異性に対する思いとは違っているように思える。似た思いを検索すると……それは、娘が父親に感じる思いに似ているよう。『彼』がわたしに向ける眼差しも、どちらかというと父親が愛娘に向けるそれと同種のように思える。 そして『彼』が彼女に向ける眼差しは、複雑過ぎて近い感情が推定できない。もっと観測が必要だろう。 わたしは、もしかしたら、『彼』を通して、やはり彼女を見ていたのかもしれない。気になる彼女と、気になる『彼』を通して見た彼女。 わたしは彼女の寝顔を近くでまじまじと見つめて言った。 「……だいすき。」 以前、夏の孤島の王様ゲームで言わされた台詞。しかし今は全くその意味が違う。そこにはわたしの、自覚したばかりだが精一杯の『感情』がこもっている。 彼女の耳には届いただろうか? 届かなくても良い。 わたしは、わたしの『素直な想い』を言葉にした。それだけでも十分だった。 そしてわたしは、ふと思い当たった。 言語による情報伝達には、齟齬が発生する。言語化できない想いや概念は、余りにも多い。人間は、言語化できない想いを非言語的手段を使ってでも、伝えようとする。 伝えたい、伝わらない。 その『もどかしさ』『不完全さ』が、人間を、この星に発生した知性を、発達させたのではないだろうか。 もどかしいから、不完全だから。伝えたいのに伝わらないから。無知で無力だから。 人は、工夫をする。より良い明日を願って。 それこそが、自律進化なのではないだろうか。 有機生命体には、寿命、すなわち耐用年数が存在する。例えば人間なら長くても100年程度。しかも生まれてから十数年間は、心身の発達のために費やされ、新たな思索を行うことはほとんどない。 そして、伝承された知識を身に付け、それを使いこなすまでにさらに数十年掛かる。伝承された知識を次の世代に伝承しつつ、新たな知識を身に付け、新たな知見を得ようとするが、そうこうしている間に心身は衰え、思考も行動も停滞していく。そして最後は生命活動を停止する。実質的に新たな知見を生み出す時間は、数十年しかない。 ここに有機生命体に宿る知性の限界がある。有限の時間という制限。 知的探求は次の世代に託すしかないが、新たな世代は毎回知識も経験も……持っている情報が何もない状態から始まるため、準備が整うまでに十数年、今までの成果の引き継ぎに数十年、情報量が増えると一定量以上は引き継ぎきれない。だから、他にも有機生命体に知性が宿る例はあっても、それほど高度には発達できなかった。 しかし、この星の知性は、あることに気が付いた。 情報をいつまでも自分の体に蓄積できないのなら、情報を外部に保存すれば良い。そして外部化した情報を複製し、広く流布する。更には流布された情報に付加情報を付けるなどして、情報を増やしていく。 こうして人間社会全体で情報を蓄積し、増加する。誰でも情報に触れることができるようにしておけば、誰かがその情報を基に新たな情報を生み出し、それらを基にまた新たな情報を生み出す者が現れ、情報の生成が連鎖していく。 そう、例えば『本』。 人間は、『本』という形で自分の得た情報、自分の感情その他を流布し、社会に残す。人間が情報の重要性に気付き、情報の保管……『本』の保管に気を付けるようになると、情報の散逸や消失が減少していった。 情報生命体である情報統合思念体による情報処理に比べれば、遥かに遅い、稚拙な仕組みだが、しかし人間は確かに、有機生命体に宿る知性の限界を打ち破った。ほんのわずかずつでも積み重ねていけば、長い時間を掛ければいずれは人間も、情報統合思念体レベルの知性を獲得することになるだろう。 一つの世代では不可能なことも、何度も世代を重ねることで可能にする。世代間の引き継ぎは、情報を外部化し、共有することで解決する。人間は、世代を越え、時を越えて、築き上げてゆく。 それが人間の力。人間の進化する力。……新たなものを生み出す力。 そう。涼宮ハルヒほどではないにしても、人間は新たなものを生み出す力を持っている。その力は単独では微々たるものだが、集団となり、力を合わせることで大きくなる。 それでは情報統合思念体はどうだろうかと考えたところで、わたしも眠くなった。もう寝よう。 「おやすみなさい……」 わたしは彼女の額……ではなく唇に、そっと口付けをした。 おやすみなさい、涼宮ハルヒ。わたしの大好きな人。 その夜、わたしは夢を見た。 夢とは、活動時間に得た情報、『記憶』を整理統合するために睡眠中に起きる脳の生理現象。 わたしは端末であって厳密な意味では生命体ではないので、本来は夢を見ることはない。情報はすべて情報統合思念体側に送られ、処理されるので、端末側で情報を整理する必要がないから。 しかしわたしは、今は情報統合思念体との接続を余り行っていない。そのため、端末側で情報を整理統合する処理が必要となり、結果、夢を見るようになった。 それは人間が見る夢と同じで、脈絡などを無視した意味不明な映像として認識されることが多い。そして多くの場合、目覚めたときには内容は覚えていない。せっかく情報を整理したのに、その途中経過をいつまでも記憶していては意味がないから。 しかし物事には例外が付き物で、たまにではあるが、起きてからも夢の内容を鮮明に記憶していたり、夢で見た内容が現実に発生したりする。それもまた人間と同じだった。ちなみに、こうした性質は人間にとって、夢に対する好奇心を掻き立てるものとなっている。 この時わたしが見た夢も、そんな鮮明に記憶している夢の類だった。夢の内容は長くなるので割愛する。機会があれば、別途報告することにする。 翌朝。光が動く気配で目が覚めた。わたしは目を開ける。視界を彼女の顔が埋めていた。彼女と目が合う。 「!?」 彼女は驚愕した顔で、慌ててわたしから顔を離した。見る見る顔が真っ赤に染まっていく。唇に暖かい湿った感触が残っている。わたしは、彼女が何をしていたのか理解した。 「お、おはよっ! 有希!」 「…………」 わたしはゆっくりと体を起こす。 「あふ……」 あくびが出た。彼女になら、この姿を見せても良いと感じているのだろう。 「うっは……有希のあくび、めちゃめちゃ可愛い……寝顔もえらい可愛かったし……」 【うっは……有希のあくび、めちゃ可愛い……寝顔もえらい可愛かったし……】 「寝顔を見ていたの。」 「!? え、あ、う……し、しゃーないやんかっ! 起きたら有希はまだ寝てたし! 寝顔がめちゃめちゃ可愛くて、その、つい見とれてたら、思わずチュッ! て……」 【!? え、あ、う……し、しょうがないじゃない! 起きたら有希はまだ寝てたし! 寝顔がめちゃ可愛くて、その、つい見とれてたら、思わずチュッ! て……】 「キスもしたの。」 「うわわわわ! そ、それは言葉のあやで、その、決してやましいことは……」 しどろもどろになる彼女。たまに見られるが、珍しい部類に入る。その原因がわたしであることに、少しおかしさを感じた。 そしてわたしは、ふと、いたずら的なことを思いついた。わたしも変わったものだと思う。わたしは、まるで朝比奈みくるのようにおろおろあたふたしている彼女に顔を寄せる。 「!? ゆ、有希?」 ちゅっ。 わたしは彼女の唇に口付けをした。彼女は首まで真っ赤にした。 「おはよう、ハルヒ。」 「!?」 「あんたも、めっちゃ可愛いで。」 【あんたも、めちゃ可愛いわよ。】 「!?!?」 彼女は、照れと驚愕と愕然とが入り混じった複雑な表情で、顔を真っ赤に染めていた。 「っ、くは……心臓が止まるか思(おも)た……」 【っ、くは……心臓が止まるかと思った……】 彼女は荒い息を整えながら、 「今、『ハルヒ』って……それに、その言葉遣い……」 「あなたにだけ。」 わたしは答える。 「たまになら、ハルヒにだけ、見せたってもええわ。」 【たまになら、ハルヒにだけ、見せたげても良いわ。】 わたしは微笑みながら……そう、『微笑みながら』言った。 「ハルヒは、わたしの特別な人やから。」 【ハルヒは、わたしの特別な人だから。】 彼女はびくんと体を震わせた。 「有希……その顔でその台詞、反則……雷に打たれたかと思(おも)たわ……」 【有希……その顔でその台詞、反則……雷に打たれたかと思ったわ……】 「そう?」 「あーもう! 嬉しいこと言ってくれるやないの!!」 【あーもう! 嬉しいこと言ってくれるじゃないの!!】 彼女が抱きつき、そのままわたしは押し倒される。 「朝から……けだもの。」 「ちゃ、違(ちゃ)うっ! 朝は普通にいちゃいちゃするだけ!!」 【ち、違うっ! 朝は普通にいちゃいちゃするだけ!!】 「……どのくらい?」 「18禁にならへん程度にっ!」 【18禁にならない程度にっ!】 「やっぱりけだもの……」 わたしの口は、彼女の口で塞がれた。舌も挿入され、口の中を蹂躙される。朝から濃厚。 『あふっ……んむっ……』 しばらくして、彼女が唇を離した。二人の唇の間にきらきら光る糸が引いていた。 「朝は……静かに抱き合っていたい気分。だめ?」 わたしは彼女の顔を上目遣いで見上げながら言った。 「有希、その体勢でその仕草で頼みごとしたら、逆効果やで?」 【有希、その体勢でその仕草で頼みごとしたら、逆効果よ?】 彼女は怪しい笑みを浮かべながら言った。 「そんな可愛くおねだりされたら、またあたしに火ぃ付いてまうやんかー♪」 【そんな可愛くおねだりされたら、またあたしに火が付いちゃうじゃない♪】 わたしは彼女に抱きすくめられる。 「でも、まあ……今はあたしも、ゆっくり抱き合いたい気分かな? でも、キスまではええやんな?」 【でも、まあ……今はあたしも、ゆっくり抱き合いたい気分かな? でも、キスまでは良いわよね?】 「キスは、いい。わたしもしたい。」 今日は土曜日。最近、不思議探索は休止中。時間はいくらでもある。 わたしは、休日の朝の心地よさと、抱き締め合った彼女の暖かさに身を委ねることにした。 『幸せ』 人間の言葉で表現するなら、この言葉がもっともふさわしいと思った。 「だいすき。」 「あたしもや……」 【あたしもよ……】 お互いの耳元で囁きあう。本当にしあわせ。 窓からは、爽やかな朝日が差し込んでいた。わたし達の行為とは正反対なほど爽やかな朝だった。 『今日は何をしようか』 彼女を抱き締め、彼女に抱き締められる幸せを感じながら、わたしはぼんやりと、そんなことを考えていた。 【追加報告:Extra.3 長門有希の夢想】 ←Report.06|目次|Report.08→
https://w.atwiki.jp/ffbe_report/pages/15.html
【FFBE詐欺ガチャ問題】 2月6日クラウド実装と同時に追加された 装備品「バスターフォーム、マーシャルグローブ」について。 事前に配信された公式生放送において、 これらの装備品を使うことでキャラクターを 強くすることができると明言されていた。 このゲームではキャラクターには複数の装備品がつけられるため、 上記の装備品を複数取得するためにガチャを回す人がいたが、 いざ実装されてみるとこれらを使用した強化には上限があった。 ゲーム内では強化の上限について何の表示もなく、 公式生放送の中では上記装備を紹介する場を設けていた にも関わらずこの上限については一切説明がなかった。 そのため、ユーザーは必要以上にガチャを回すことになり、 景品表示法違反、また詐欺に該当するのではないか という点が問題になっている。 また、これら装備品を1つ取得するだけでも 提供割合が0.25%となっているキャラクターを引く必要があり それを引き当てるには少なく見積もって7万円が必要となる。 またこれらを複数組み合わせるようなシステムも 擬似的なコンプガチャではないかと問題視されている。 通報テンプレ https //www65.atwiki.jp/ffbe_report/?page=%E2%91%A0%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC
https://w.atwiki.jp/longboxman/pages/78.html
The New York Times Book Review Translation Is Hard Work. Lydia Davis Makes It Thrilling. The Best Books of 2021 ‘Looking for the Good War’ Says Our Nostalgia for World War II Has Done Real Harm A Book’s Unlikely Pairing Fernando Pessoa and Plane Crashes Ann Patchett on ‘These Precious Days’ Has the Myth of the ‘Good War’ Done Us Lasting Harm? Magritte, Surrealism and the Pipe That Is Not a Pipe Mel Brooks Keeps It Very Light in ‘All About Me!’ After 110 Years, an Overdue Book Is Returned to a Library in Idaho Alice Sebold Apologizes to Man Wrongly Convicted of Raping Her Stories Anchored in Place, From Japan to the U.S.-Mexican Border The Horrors of Irish Magdalene Laundries, Revisited An Earthquake Has Broken Tehran, but She’s Looking for a Different Fix Performing Twins Part Ways. Estrangement Ensues. Who Owns a Recipe? A Plagiarism Claim Has Cookbook Authors Asking. Esper Claims Defense Dept. Is Improperly Blocking Parts of His Memoir What to Do This Weekend Jakucho Setouchi, 99, Dies; Buddhist Priest Wrote of Sex and Love Noah Gordon, 95, Dies; American Novelist With an Audience Overseas Starring Louise Erdrich as Herself Thomas Mann, Guilty Pleasures and Other Letters to the Editor Ian Frazier Wishes Somebody Would Write About the World’s Largest Beaver Dam New in Paperback ‘To Make Men Free’ and ‘You Love Me’ Thanksgiving, This Year vs. Last Better Living Through Book Reading 8 New Books We Recommend This Week When Reader Meets Writer Jewish Pride, and Prejudice, in Veera Hiranandani’s New Middle Grade Novel Not Your Traditional Hanukkah/Christmas Picture Book Last-Modified 2021/12/01 19 00 02 Webhttp //www.nytimes.com/pages/books/
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1202.html
Report.05 涼宮ハルヒの困惑 「あなたに提案がある。」 わたしは言った。 「わたしの部屋に来て。」 彼女は目を丸くする。 「あなたは強烈なストレスに晒され続けている。気晴らしが必要。」 「ちょ、ちょぉ待ちぃな!」 【ちょ、ちょっと待ってよ!】 彼女は慌てて言う。 「そりゃぁ、あたしだって、家には帰りたくない気分やし、誰かと一緒にいたい気分やで? せやけど、有希と一緒におったら、有希まで変な奴らにマークされてまうやんか!」 【そりゃぁ、あたしだって、家には帰りたくない気分だし、誰かと一緒にいたい気分よ? だけど、有希と一緒にいたら、有希まで変な奴らにマークされちゃうじゃない!】 「大丈夫。」 「何が!?」 「わたしのマンションはオートロック。他にも多数の仕掛けがある。あなたの家より部外者は侵入しにくい。」 「そういうことやなくて! あたしと一緒におるところを見られたら、有希まで一緒に変なことされるって!」 【そういうことじゃなくて! あたしと一緒にいるところを見られたら、有希まで一緒に変なことされるって!】 「へいき。」 わたしは彼女を真っ直ぐに見ながら言う。 「わたしに考えがある。」 「考え?」 「そう。」 彼女は、何を言い出すのかという表情でわたしを見ている。 「マンション内は部外者が侵入しにくい。入ってしまえば安全。校内も同様。問題は学校を出てからマンションに入るまで。この間、あなたがあなたであると分からないようにすれば良い。」 わたしは、鞄からあるものを取り出した。 「これを使う。」 彼女は呆気に取られていた。 「有希……前々から思ってたんやけど、言(ゆ)うて良い?」 【有希……前々から思ってたんだけど、言って良い?】 「なに。」 「あんた、実はめちゃめちゃ大胆やな……」 【あんた、実はめちゃ大胆よね……】 彼女は、わたしが取り出したものを見て、すぐにわたしの提案を理解していた。 「ていうか、何でこんなもん、持ってんの?」 【ていうか、何でこんなもの、持ってんの?】 「この教室に来る前に、演劇部から拝借した。」 本当は情報連結で作成したのだが、それは伏せておく。わたしが取り出したものは、この高校の『男子』制服だった。 「まさか男装を迫られるなんてなぁ……」 【まさか男装を迫られるなんてねえ……】 彼女はまるで『彼』の真似をするように、やれやれと肩をすくめた。 「ま、こういうのもたまには意外性があっておもろいかもね!」 【ま、こういうのもたまには意外性があって面白いかもね!】 そう言うと、彼女は『男子の制服』に着替え始めた。 「ところで、有希。服を替えるのは、まあ分かるとして、肝心の顔とか頭はどうすんの?」 「これを使う。」 わたしは、バンダナと眼鏡を取り出した。眼鏡は以前私が掛けていたものと同じ意匠。 「その辺もぬかりはないってわけね……」 程なくして、頭をバンダナで覆い、眼鏡を掛けた、可愛らしい『男子生徒』ができあがった。先日言語化に成功した『何か』がわたしの中に湧き上がる。 「萌え……」 「ん? 何(なん)か言(ゆ)うた?」 【ん? 何(なん)か言った?】 「なんでも。」 声に出ていたようだ。 彼女は変装が終わると、鏡でしきりに自分の姿を確かめていた。手持ちの鏡では全身が見られないため、『男子便所』の鏡で。 「へぇー、ほぉー、ふぅーん。」 彼女はあらゆる角度から、生まれ変わった自分の姿を確かめていた。 「どう見ても小柄な男の子です、本当にありがとうございました!」 学校からの帰り道。わたしと涼宮ハルヒは並んで歩いていた。 お互いに無言。心拍数の増加を検出。彼女(今は彼)は緊張している。 「なあ有希……今からあた……んんっ。お、俺が独り言を言うけど、気にせんとってくれ。こんなこと言(ゆ)うんも、多分、いつもと違う、ありえへん状況やからやろな。……こ、こんな可愛い娘と一緒に帰ってるんや。て、ててて、手ぇとか繋いでみたいな~、なんて……」 【なあ有希……今からあた……んんっ。お、俺が独り言を言うけど、気にしないでくれ。こんなこと言うのも、多分、いつもと違う、ありえない状況だからだろうな。……こ、こんな可愛い娘と一緒に帰ってるんだ。て、ててて、手とか繋いでみたいな~、なんて……】 涼宮ハルヒは明後日の方を向きながら言う。声が裏返っている。 「べ、別に変な意味違(ちゃ)うで!? お、おっ、『男』なんやから、そんなこと思(おも)てまうんも自然なことやろ!?」 【べ、別に変な意味じゃないぞ!? お、おっ、『男』なんだから、そんなこと思ってしまうのも自然なことだろ!?】 わたしはややあって、彼女(彼)の手を握った。 その手はじんわりと汗ばんでいる。……わたしの手も汗ばんでいたかもしれない。 彼(彼女)は耳まで赤くしていた。……わたしの顔も赤くなっていただろうか。 なぜ彼女(彼)は急にこんなことを言い出したのだろうか。理由はいろいろあるだろう。 彼女(彼)は間違いなく今回の件で疲れていた。先ほど教室で自らの過去を語ったのも、ついこぼしてしまった本音という面があるだろう。 しかしわたしは、また別の理由を想起した。彼女は孤独なのだ。表面上は明るく振舞っているが、真剣に自分と向き合おうとしない周囲に苛立っていた。そしてついには失望した。閉鎖空間を発生させ、世界を変えてしまおうとするほどに。 SOS団を結成してから、時が流れ、彼女は明るく、人が丸くなったと周囲は評価している。確かに、自分の言うことを聞き、付き合ってくれる仲間を得て、孤独が解消されたと言えるだろう。……表面上は。 だが、内実はどうだろう? わたしはあの日の『彼』の言葉を思い出す。 『みんなは、後の影響が怖くてよう物も言われへんイエスマンや。』 【みんなは、後の影響が怖くてろくに物も言えないイエスマンだ。】 古泉一樹は、『機関』の構成員として、閉鎖空間の発生を恐れている。 朝比奈みくるは、未来人として、既定事項と禁則事項に縛られている。 わたしは、観測者として、極力観測対象に影響を与えないように行動してきた。 『彼』だけが唯一、自らの判断と責任において行動できる自由な存在だが、結局は涼宮ハルヒの言動に振り回され、状況に流されてしまっている面は否定できない。 SOS団でさえも、涼宮ハルヒが真に求める『時には叱ってでも自分と真剣に向き合ってくれる存在』ではなかった。 わたしは、自分の状況と心境を振り返ってみた。 生み出されてから三年間、わたしはずっとひとりで待っていた。時間遡行してきた『彼』が訪ねてきて、わたしは将来自分が置かれる立場、自分が起こす事件を知る。活動期に入り、SOS団が結成されて彼女達に出会い、共に行動してきた。そこでもわたしは、観測者として必要最小限の介入で済むよう努めてきた。観測者として余計である、感情を表す機能は、わたしには持たされていない。いつしかわたしは、『無口だが頼れる団員』、『SOS団随一の万能選手』と位置付けられた。 人間には『朱に交われば赤くなる』という言葉がある。 人間と共に行動していると、たとえ作り物の命であってもいずれは感情が宿るらしい。まして涼宮ハルヒと『彼』は、二人揃うと周囲の関係した者達を残らず変えてしまう力を持っている。その影響はSOS団員も……わたしも例外ではなかった。 わたしの中に『感情』が宿り、芽吹いて茂り、花開いた。SOS団員と共に行動するうちに、最初はまだまだ未熟だった感情も、いつしか大きく成長していた。 しかし、それを表出することは許されない。観測対象である涼宮ハルヒは、わたしを『無口キャラ』と定義していた。観測対象へ与える印象が変わっては不都合。そうして時を過ごし、延々と繰り返される夏を超えて冬、わたしは世界を改変する事件を起こした。 事件を通して、わたしは抑圧された感情は暴走することを知った。わたしに感情が存在することに気付いた『彼』の存在が、今わたしの暴走を防いでいる。『彼』になら、たとえわたしの感情をぶつけてしまったとしても、大丈夫だと思えるから。 ……彼女には、そのような存在がいない。 『一人でいるのは寂しい』と思いながら、その思いを表すことができない。誰と一緒にいても、どんなことをしていても、内実は孤独。孤独であることを何とも思っていないように装っているが、本当は何より孤独が辛い。 『たった一人でも良い、誰か真剣にあたし(わたし)と向き合ってほしい。』 『たった一人でも良い、誰かありのままのあたし(わたし)を見てほしい。』 傍若無人、我が道を突き進む無敵の少女の姿の裏で。 無表情、何事にも動じない無謬の少女の姿の裏で。 自らをさらけ出せる、信じられる、本当に心を許せる存在を渇望している。 わたしと彼女は、同類だった。信じられる存在が、いるか、いないか。ただそれだけが両者の違い。 マンションから近いコンビニエンスストアまで来た。わたしは、ここで食料を調達して帰ることもある。『彼』は誤解しているようだが、わたしは決してカレーばかり食べているわけではない。 しかし、食事以外のもの、例えば飲み物やお菓子は買っていないのも確か。今日は、涼宮ハルヒという『お客さん』もいる。何か買っていった方が良いと判断した。 「わたしの部屋には、わたしの分の食事しかない。ここで何か買っていこうと思う。」 わたしは彼女(彼)の手を離して、言った。 「え? ああ、そっか、あた……もとい、俺が増えるんやな。ほな、何(なん)か買(こ)うてこか。」 【え? ああ、そっか、あた……もとい、俺が増えるんだな。じゃあ、何か買っていこうか。】 わたし達は店内に入っていった。 「何買おかな~? あ、『甘くない炭酸』ある! 俺、コレめっちゃ好きやねんわ~」 【何買おうかな~? あ、『甘くない炭酸』がある! 俺、コレめちゃ好きなんだよな~】 彼女(彼)は、他にも様々な菓子を籠に入れていく。わたしは、あるものを手に取った。 「あれ? 有希、トラベルセットなんか買(こ)うてどうすんねん?」 【あれ? 有希、トラベルセットなんか買ってどうすんだ?】 「あなたに必要になる。客用の洗面具は部屋にない。」 「……えっと。話が見えへんねんけど??」 【……えっと。話が見えないんだが??】 わたしは彼女(彼)の瞳を見つめながら言った。 「あなたが泊まるために必要。」 彼女(彼)は籠を取り落とした。目を丸くし、口を開けてわたしの顔を眺めている。 「……………………」 これはわたしの台詞ではない。彼女(彼)が呆気に取られている。 「あなたは家に帰りたくないと言った。」 「そ、それは確かに言(ゆ)うたけど……」 【そ、それは確かに言ったけど……】 「気晴らしの方法の一つは、誰かに話をすること。今のあなたに必要と判断した。」 それに、と言葉を続ける。 「わたしもあなたの話が聞きたい。だめ?」 彼女(彼)は瞬きを数回した。 「えっと、有希がええんやったら、その……泊まらしてもらうわ。」 【えっと、有希が良いなら、その……泊まらせてもらうぞ。】 「そう。」 「何(なん)か……今日は、有希の意外な面をいろいろ見せられてる気がするなぁ……」 彼女(彼)は、困惑した表情で頬を掻きながら呟いた。 マンションに着く。いつものようにロックを解除し、エレベーターで部屋に向かう。 「入って。」 「お邪魔しまーっす♪」 彼女(彼)は部屋に入ると、キッチンに買い物袋を置き、リビングに向かった。 「とりあえず、コレ取るわ。」 【とりあえず、コレは取るわ。】 彼女(彼)は眼鏡とバンダナを取る。わたしはキッチンに入ると、湯を沸かしながら買った物を冷蔵庫に入れ始めた。 「あ、有希。手伝うわ。」 「いい。座ってて。」 お客さん、と言うわたしを制して、彼女は言った。 「まあ、ええからええから。あたしが手伝いたいんやって。」 【まあ、良いから良いから。あたしが手伝いたいんだって。】 「……では、冷蔵庫に入れない物を持って行って。」 「りょーかい♪」 彼女は、お菓子等をリビングに運んで行った。わたしは飲み物等を冷蔵庫に入れ終わると、お茶と大皿を持って、リビングへ向かった。 「あ、ありがとー♪」 コタツに着いた彼女は、お茶を受け取りながら言った。 「うーん、男の格好で女の子の部屋にお呼ばれするのって、何か妙な感じやわ。って、有希! よぉ考えたら、あんた、傍から見たら自分の部屋に男連れ込んだことになるやん!?」 【うーん、男の格好で女の子の部屋にお呼ばれするのって、何か妙な感じだわ。って、有希! よく考えたら、あんた、傍から見たら自分の部屋に男連れ込んだことになるじゃない!?】 「……確かに。」 「うわっ、そう考えたら、何(なん)か急に恥ずかしくなってきた!」 彼女は見る見る顔が赤くなっていく。 「うっわー、有希、大っ胆~!!」 顔を真っ赤にしながら、彼女は笑って言った。 「んっふっふ~。それなら大胆な有希ちゃんの要望にお応えして、おにーさん、大胆にあ~んなことやこ~んなことしちゃおっかな~? な~んて♪」 彼女は手をひらひらと振りながらお茶に口をつける。わたしは言った。 「……百合?」 ぶふ――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!! 彼女は盛大にお茶の霧を吹いた。 「げほげほっ、げほっ」 彼女はむせている。 「こほっ! はぁ、はぁ、はぁ……」 「拭くものを取ってくる。」 「あ、あんたが変なこと言うからやんかっ! いきなり何(なん)ちゅうこと言い出すんや、この娘は……」 【あ、あんたが変なこと言うからじゃないのっ! いきなり何(なん)てこと言い出すのよ、この娘は……】 わたしは布巾で後始末をする。 「何(なん)か……今日はあんたにドキドキさせられっぱなしやな。」 【何(なん)か……今日はあんたにドキドキさせられっぱなしね。】 「そう。」 「普段、あんだけ無口やのに今日はやけによぉ喋るし……何(なん)かあったん?」 【普段、あんだけ無口なのに今日はやけによく喋るし……何(なに)かあったの?】 「なにも。」 「いつもとキャラ違(ちゃ)うで? 何があんたをこんなに変えたん?」 【いつもとキャラ違うわよ? 何があんたをこんなに変えたの?】 「べつに。」 こう答えると嘘になるのかもしれない。彼女達と共に行動するようになって、わたしは少しずつ、しかし確かに変化した。もっとも、今日のわたしは、確かに少しおかしいかもしれない。 「ま、まぁ、人間誰しも、普段とは別の顔を持ってるもんやし。今日は有希の意外な一面が見られたってことで! うん、そういうことにしとこ! ……有希の場合、普段とのギャップがありすぎて、その、ちょっとアレやけど……」 【ま、まぁ、人間誰しも、普段とは別の顔を持ってるもんだし。今日は有希の意外な一面が見られたってことで! うん、そういうことにしとこう! ……有希の場合、普段とのギャップがありすぎて、その、ちょっとアレだけど……】 彼女は気を取り直し、スナック菓子の袋を開け始めた。 「……惚れた?」 ばり――――――――――――――――――――――――――――――――――ん!! 彼女はスナック菓子の袋を盛大に引きちぎった。 「全部皿の中に入った。見事。」 「……一瞬、こうなる予感がして、お皿の上に持って行ってん……」 【……一瞬、こうなる予感がして、お皿の上に持って行ったのよ……】 彼女は、わたしの瞳を見つめながら言った。 「有希……言(ゆ)うても良い?」 【有希……言っても良い?】 「なに。」 「あんた……実はめちゃめちゃおもろい娘違(ちゃ)うか?」 【あんた……実はすっごく面白い娘なんじゃない?】 「……さあ。」 わたしはいつもの顔で答えた。 ←Report.04|目次|Report.06→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1205.html
Report.06 長門有希の陥落 いつもと違う、ちょっとおかしい(主に服装が)彼女と、いつもと違う、ちょっとおかしい(主に言動が)わたしの、いつもと違う、ちょっとおかしい(主に空気が)風景。 お茶を霧にしたり、お菓子の袋を引きちぎったりと忙しい彼女だったが、それでも次第にくつろぎ、話をし始めていた。 わたしはお茶のお替りを淹れたり、飲み物を取ってきたり、お菓子を食べたりしながら、彼女の話を聞いていた。 正確に言うと、話をしている彼女を見ていた、となるかもしれない。 彼女の話す内容は様々だった。普段部室やSOS団の活動中に話しているような内容もあれば、自分の身の上話、国際政治や領土問題から、芸能に今夜のおかずまで。彼女の興味の対象は幅広い。聞いていて飽きない、という感想を相対した人間は持つだろうと予想された。 ただ、それでも全体的な傾向としては、平均的な女子高生の会話の内容といえた。見識や考察が、平均的な女子高生を凌駕しているだけで。 そのまま食事に移行する。コンビニエンスストアの弁当。 わたしは味覚から得られる情報には特に重きを置いていないが、今日の弁当は普段よりも、人間の言葉で言うところの『美味しい』ものだった。 「ぷっは~~~! やっぱり食事にはコレやね!!」 【ぷっは~~~! やっぱり食事にはコレよね!!】 彼女は、『甘くない炭酸』を飲みながら言った。 「あたし、前から甘ったるい炭酸飲料しか売ってへんことが不満やってん。外国ではむしろ『ノンガス』って頼まんと、『水』を頼んだら『炭酸水』が出てくるっていうし。今まではカクテル用のソーダで我慢してたんやけど、最近はいろいろ選べるようになったわ。やっと時代があたしに追いついてきたんやなぁ。」 【あたし、前から甘ったるい炭酸飲料しか売ってないことが不満だったの。外国ではむしろ『ノンガス』って頼まないと、『水』を頼んだら『炭酸水』が出てくるっていうし。今まではカクテル用のソーダで我慢してたんだけど、最近はいろいろ選べるようになったわ。やっと時代があたしに追いついてきたのねえ。】 彼女は、しみじみと言った。 『誰かと一緒に取る食事』は、『一人で取る食事』よりも『美味しい』。今日初めて知ったこと。 食後は、お茶を飲みながらのんびりと過ごす。彼女の希望で、TVやラジオは電源を入れていない。あれだけの取材攻勢を掛けられ、大衆の好奇心に弄ばれた。いや、今も弄ばれている。当分は見たくもないのだろう。何事もなかったかのように明るく振舞っているが、やはりその心中は穏やかではない模様。 彼女が哀れだと思った。そして、なぜかそばに居たいと思った。 そろそろ食事から時間が経った。入浴を提案しよう。 「お風呂の準備をする。それともシャワー?」 「あ、溜めて溜めて。」 「了解した。」 わたしは席を立ち、湯船にお湯を張る準備をして、また席に戻った。 「あなたから入るといい。」 「有~希~?」 彼女はにんまりと笑いながら、『彼』が見たら先のことを考えて諦観に至りそうな顔で言った。 「あたしが、このままお風呂を用意されて、はい、そうですか、って入る人間やと思うか~?」 【あたしが、このままお風呂を用意されて、はい、そうですか、って入る人間だと思うのかしら?】 わたしは、彼女の性向を考慮したデータベースから、該当する状況を検索する。 「……思わない。」 「女の子同士でお泊まり言(ゆ)うたら、お風呂で流しっこに決まっとぉやろ♪」 【女の子同士でお泊まりと言えば、お風呂で流しっこに決まってるじゃない♪】 その情報は、主に男性向けの情報源によって提供される一種の幻想なのだが、普段の言動からも分かるように、彼女の主な情報源はそのような男性向けの類なので、彼女にとっては、それが当然の行為。 やがて、湯船に規定量のお湯が溜まった事を知らせる音が鳴った。 「さ、入ろ、入ろ~♪」 彼女に手を引かれて浴室に向かう。彼女の顔は1MeV(メガエレクトロンボルト)級の笑顔だった。今の彼女なら、一億度以上にプラズマを加熱して、熱核融合炉を起動させることができそうだと思った。 まずわたしが彼女を洗う。 「背中にニキビを発見した。」 「嘘ぉ!? どこどこ?」 「ちょうど手の届かない場所。」 そう言って、わたしは該当箇所を指先で触れる。 「痛たたた……確かにそこは、ちょっと痛いなとは思(おも)てたけど、ニキビできてたんか。」 【痛たたた……確かにそこは、ちょっと痛いなとは思ってたけど、ニキビができてたのか。】 「保湿に気をつけるべき。後で薬を塗ってあげる。」 「頼むわぁ~。うう、油断した……不覚っ……!」 【頼む~。うう、油断した……不覚っ……!】 自分の目の届かない場所でニキビの発生を許したのが余程悔しかったらしい。だが、これも致し方ないことなのかもしれない。 「ニキビの発生もストレスの表れ。やはりあなたには気晴らしが必要だった。」 「そやね……」 【そうね……】 お湯を掛けて、泡を洗い落とす。 「はい、おわり。」 「ありがと~。気持ち良かったわぁ♪」 『気持ち良い』という言葉には、大まかに分類すると二つの意味がある。 一つは、精神的な意味。もう一つは、性的な意味。 わたしはふと、彼女が言ったのはどちらの意味なのだろうかと考えた。それは、人間で言うところの、ある種の『予感』だったのかもしれない。 「次はあたしが洗ったげる番やな。」 【次はあたしが洗ったげる番ね。】 彼女は……ニヤニヤしていた。にやけるのを必死で堪えて、結局堪え切れなかったという表情に見えた。 わたしはその時、感じるべきだったのだろう。『貞操の危機』というものを。 今度は彼女がわたしを洗う。 「うわ~。有希の肌って、ほんま白いなぁ~。それにめっちゃすべすべやし。」 【うわ~。有希の肌って、ほんと白いわね~。それにすっごくすべすべだし。】 彼女は背中だけでは終わらせなかった。 「……そこは自分で洗える。」 「ま、ええから、ええから。気にしたらあかん♪」 【ま、良いから、良いから。気にしちゃだめよ♪】 彼女の手が、わたしの腕を、腹を、脚を、洗ってゆく。彼女は、わたしの身体を撫で回しながら、怪しく囁いた。 「ええかぁ~? ええのんかぁ~? 最高かぁ~?」 はっきり言って、今の彼女は、いわゆる『えろおやぢ』である。 何が彼女をこうしてしまったのだろうか。やはり不安定な精神状態のときに異性装をさせたのがまずかったのだろうか。 ということは、結局のところわたしの行動の結果、わたしがこのような状況に置かれているわけで、人間の言葉で言うところの『自業自得』、過去におけるわたしの行動の責任を現在のわたしが取っているわけで、そもそもなぜわたしはあの時、わざわざ『男装』を提案したのかを考えてみるに、彼女の属性と最もかけ離れた属性として男性を選んだからであって、しかし、彼女の麗しの男装姿を見てみたいと少しだけ思ったのもまた事実であり、ああ、もう何を考えているのか分からない。とりあえずこれだけは確実に言える。 「……きもちいい。」 彼女は、とても満足した顔をした。彼女の瞳が妖しく光る。 もう、どうにでもしてください。 ………… ……… …… … 最後に二人で一緒に湯船に浸かる。二人で入ってもさほど窮屈ではない湯船だが、今わたしは彼女に後ろから抱きかかえられ、密着している。 「有希の体って、胸はちっちゃいけど、めっちゃ抱き心地ええなぁ~」 【有希の体って、胸はちっちゃいけど、すっごく抱き心地良いわね~】 わたしの耳元で、彼女が囁く。結局、あれからわたしは、全身を隈なく蹂躙された。わたしが『ぐったり』するまで。 「……すけべ。」 振り返って、わたしは言った。 「そういう反応も、めちゃめちゃ可愛いなぁ~」 【そういう反応も、めちゃ可愛いなぁ~】 「…………」 わたしはそっぽを向いた。 「さっきは、その、思わず暴走してしもたけど……詳しく語ると18禁になるし……って、あたし17歳やな……詳しくは語らへんけど、有希と、こうしていちゃついてると、すごく気持ちが落ち着くわ。何ていうか、めっちゃ気持ちええねん。性的な意味だけやなくて、精神的な意味でも。」 【さっきは、その、思わず暴走してしまったけど……詳しく語ると18禁になるし……って、あたし17歳だったわね……詳しくは語らないけど、有希と、こうしていちゃついてると、すごく気持ちが落ち着くわ。何ていうか、すっごく気持ち良いのよ。性的な意味だけじゃなくて、精神的な意味でも。】 「性的な意味もあるの。」 「うっ、それは……気にしたら負けや♪」 【うっ、それは……気にしたら負けよ♪】 彼女はわたしの耳に息を吹きかけてきた。背筋がぞくぞくする。 「ぁはぁ……」 吐息と声が漏れる。 「んふふん? 耳弱いんや?」 【んふふん? 耳弱いんだ?】 彼女はわたしの耳を弄び始めた。またスイッチが入ってしまったのだろうか。 「……もう、上がる……のぼせそう。」 「むふー、残念。」 彼女はわたしの耳を甘噛みしながら言う。 わたし達は湯船から上がった。彼女の体が桜色に上気しているのは、入浴のせいだけではないのだろう。 風呂上り。わたしと彼女は二人して、『豆乳』を一気飲みする。彼女曰く、片方の手を腰に当てるのが作法なのだそう。もちろんそれは違うのだが、もはや何も言うまい。 二人、パジャマ姿で片方の手を腰に当て、豆乳を一気に飲み干す。 「ぷっはぁ~~~~!!」 彼女が情報源にすると思われる様々な情報を検索すると、この場合、一気に飲み干される飲み物としては『牛乳』が最も登場頻度が高かった。 「牛乳って、実はあんまり体に良ぉないんやって。えーと、何やったかな。燐が多いから、体からカルシウムが排泄されて、かえって骨粗鬆症になるとか、たんぱく質が体内に入り込んでアレルギー体質になるとか、そもそも哺乳類が離乳してからも乳を飲むことは本来不都合やとか……あ、そうそう、乳糖を分解できひんから、お腹壊すんやって。」 【牛乳って、実はあんまり体に良くないんだって。えーと、何だったかな。燐が多いから、体からカルシウムが排泄されて、かえって骨粗鬆症になるとか、たんぱく質が体内に入り込んでアレルギー体質になるとか、そもそも哺乳類が離乳してからも乳を飲むことは本来不都合だとか……あ、そうそう、乳糖を分解できないから、お腹壊すんだって。】 そのような理由から、豆乳を飲むことにしたらしい。『健康ブーム』の影響で、飲むのはおからも含んだどろり濃厚な無調整豆乳。 わたしは彼女の死角で薬箱を構成した。 「では薬を塗る。そこに横になって。」 「はぁ~い。」 彼女は上半身裸になると、リビングのラグの上にうつ伏せになる。 「膿を持っている。膿を抜いておいた方が、治りが速い。」 「うっ……そうなん?」 【うっ……そうなの?】 「そう。」 背中であるため、彼女からは死角になるのを良いことに、わたしは処置を開始する。彼女への情報操作は許されていないが、要は『直接』彼女に操作しなければ良い。わたしは情報操作によって、人間が使用する『医療機器』を作り出した。 そう、『道具』を介在させることで、彼女への操作を可能にできる。今頃になって、そのことに思い至った。 ピンポイントレーザーで、ニキビの頭部に小さな穴を開ける。皮脂腺に挿入できるほど極細のピンセットで、奥にある細菌叢ごと、膿をつまみ出す。生理食塩水で、膿を取り去った跡と周囲を洗浄する。これにより、患部は本来の微生物分布に戻る。 (術式おわり。) 何となく声に出さずに呟いた。 「おわった。」 「あ、ありがと……何か、いろいろされたような気がするけど……何したん?」 【あ、ありがと……何か、いろいろされたような気がするけど……何したの?】 「適切な処置。」 「……そう。」 彼女は、服を着ながらぽつりと呟いた。 「今の有希、お医者さんみたいやったな……」 【今の有希、お医者さんみたいだったわね……】 『おいしゃさんごっこ』 なぜかこんな言葉がわたしの記憶領域に浮かんだ。この言葉にもやはり二つの意味があるらしい。 一つは、とてもほほえましい意味。もう一つは、どちらかというとこっちが主な用法に思えるが、性的な意味。 今日という日も残り少なくなった。そろそろ寝ることを提案しよう。 「そろそろ寝る時間。」 「あ、もうこんな時間なんや。さすがに疲れたかな、今日はちょっといろいろあったし。」 【あ、もうこんな時間なんだ。さすがに疲れたかな、今日はちょっといろいろあったし。】 彼女も同意する。わたしの瞳を見据えて。 「主に新発見方面で。ほんまイロイロ発見させられたわ。」 【主に新発見方面で。ほんとイロイロ発見させられたわ。】 わたしも彼女にいろいろされた。主に性的な意味で。わたしの中で涼宮ハルヒの呼称が変化したのも、今日のこと。 「布団を準備する。待ってて。」 「有~希~?」 彼女はにんまりと笑いながら、わたしが見ても先のことを考えて諦観に至りそうな顔で言った。 「あたしが、このまま布団を用意されて、はい、そうですか、って寝る人間やと思う~?」 【あたしが、このまま布団を用意されて、はい、そうですか、って寝る人間だと思う~?】 わたしは、彼女の性向を考慮したデータベースから、該当する状況を検索する……までもなかった。 「……思わない。」 「と~ぜんや♪ 女の子同士でお泊まり言(ゆ)うたら、同(おんな)じ布団で仲良く語り合うに決まっとぉやろ♪」 【と~ぜんよ♪ 女の子同士でお泊まりと言えば、同(おんな)じ布団で仲良く語り合うに決まってるじゃない♪】 なお、彼女の言う行為は決して平均的な人間の行動ではないが、もちろん彼女は平均的な人間ではない。 「有希の部屋って、どんな感じなんやろな? 意外に女の子らしい、可愛い部屋やったりして。」 【有希の部屋って、どんな感じなんだろ? 意外に女の子らしい、可愛い部屋だったりして。】 ……申し訳ない。わたしの部屋は、あなたの期待には到底応えられそうにない。 わたしの身辺は、結局のところ、あなたがわたしという個体を見て思い描く通りに設定されている。よって、今のわたしの部屋は、あなたが普段本を読むわたしを見て思い描いた通りの部屋だと思う。 なるほど、そういう意味ではあなたの期待に違わないのかもしれない。 しかし今のわたしに対するあなたの印象は随分変化したはず。わたしが変化させてしまったから。だから、現在のあなたが期待するものは、わたしの部屋にはないだろう。 でも、もしあなたが『こうあってほしい』と願うなら、わたしの身辺はあなたが願った通りに再構成される。 わたしはあなた色に染まる。あなた好みのわたしになる。もっとあなた色に、わたしを染めてしまってもいい。染められてしまいたいかもしれない。 ……ここまで一気に考えて、ようやくわたしは正気を取り戻す。 確かに今日のわたしは、どこかおかしいらしい。つい数時間前にそう呼ぶのをやめようと決意したばかりだが、さすがにこれは呼んでも良いと思う。大量のエラーが発生している。こんな微妙に回りくどい独白をしているなんて、まるで『彼』のよう。やれやれ。これも『彼』の口癖。 「……有希、それキョンのモノマネ? 妙に似てるっていうか、実感篭もっとぉで?」 【……有希、それキョンのモノマネ? 妙に似てるっていうか、実感篭もってるわよ?】 声に出していたらしい。独白の朗詠(ろうえい)もとい漏洩(ろうえい)は『彼』のいつもの行動。やれや……おっと。 ←Report.05|目次|Report.07→
https://w.atwiki.jp/dollbook_wiki/pages/275.html
ハンカチでつくる! リカちゃんお洋服BOOK あこがれのドレスコレクション 著者 荒木 さわ子 発行日 2016/11/15 発行所 主婦の友社 ISBN 978-4798619231 収録パターン 合計13点 まきまきウェディングドレス まきまきバラドレス まきまきマーメイドドレス モデルさんワンピース ねこちゃんワンピース レトロワンピース 赤ずきんちゃんドレス ようせいさんドレス デビかわハロウィンドレス ゆめかわアイドルドレス 魔法つかいドレス アリスワンピース 恋するウェディングドレス 【スレ内感想など】 (14-262) ハンカチでつくる!リカちゃんお洋服BOOKを子供の家庭科クラブ用に買ってみたけど、可愛いお洋服がたくさんあってびっくり 私も作りたくなってしまったよ (14-265) 載っているお洋服はアリス風とかプリキュア風とか子供が好きな着せ替え人形の服だけど、型紙はしっかりしていて使えそうだよ。 パーツもあまり細かくなくて作りやすそう。 ハンカチを巻きつけるだけの服もあるけど、その作り方も面白かった。 ○コメント○ ~実際に作ってみての感想やその他この本の情報をお気軽にどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/reportdesigner/pages/31.html
#blognavi Report Designer Ver5.00169がリリースされました。 Ver5.00169で追加・拡張された機能は下記の通りです。 新規パラメータ /rprnonebook の追加 mrr保存サイズの拡張 ページ連結オプションの機能拡張 新規パラメータ /rpagejang の追加 新規パラメータ /rpagejangopt の追加 OCX Viewerでファイル保存(エクスポート)機能の拡張 照会ツールバーの入力機能の拡張 新規パラメータ /rpagejangopt の追加 PDFエクスポート機能の拡張 新規パラメータ /rset404message の追加 新規パラメータ /rxmlrdrs_checkid の追加 新規パラメータ /rxmlrdrs の追加 新規パラメータ /rxmlsave の追加 詳細内容、および改修された内容については、リリースノート5.00169をご参照ください。 →リリースノートのダウンロード カテゴリ [お知らせ] - trackback- 2009年12月16日 12 50 46 #blognavi
https://w.atwiki.jp/astrophysics/pages/18.html
本のレヴュー ここでは自分が過去に読んだor今現在読んでいる本の紹介をしていきます。参考程度にだうぞ。 読み終わったもの Radiative Processes in Astrophysics George B. Rybicki ,Alan P. Lightman著。 通称ラジプロorライビキ。天文にしぼって必要な知識がまとめられていて、相対論的ビーミング効果や偏光・放射などの基礎知識がまんべんなく学べる。5~7章については、各radiationがスペクトルのどこに、どのような形で影響するかが詳細に書かれていて、勉強になった。各章ごとに問題もあり、なんと解答(!)もついている、懇切丁寧な本。しかし、問題でいきなり(なんの前触れもなく)知らない文字がおかれていたり、実はその文字が使われなかったり、解答には別の文字が使われていたりすることがよくある。問題の設定がよくわからなかったら、解答の方に図が載っている(ことが多い)のでそれだけ参照して解いてみるとよいかも。問題を解くと、(当たり前だけど)力がつくので、問題も解くことがオススメ。面白い問題が多い(と、個人的には思う)。 8章のplasmaについて、さらに詳しく知りたいときは、Jacksonの7章も参照のこと。 9章は詳しい式の導出などは行わないが、導出も含めて詳しく知りたければ、例えばHartree-Fock Approximationなどについては、猪木・川合の13章も参照するとよい。9章前半(9.1~9.2)あたりの数式でわからないところは、同じく猪木・川合の5章を参照するとよいかも。 あとは、AGNの二乗のAppendix4"Nebular Quantum Mechanics"あたりも参考に。 ラジプロの個人的メモ (まだ全然充実せず。2010年3月8日更新) ラジプロの誤植 以下、ラジプロでの誤植。まだ全然ピックアップしきれてない。。 ちなみに、誤植はこの版について。 Chap 4 p.120 一番上の式 となっているところを とする。 p.131の一番下の式 のはと直す。 p.131のFigure4.5の座標をになおす。 p.140 (4.93)式の上にある を とする。 p.143のFigure 4.10のの取り方が時計回りになっているが、反時計回りで取らないと、(4.102)式とあわない。 Chap 5 p.164の(5.23)式の右辺の を Chap 6 p.175のSect 6.4のタイトル SPECTRUM AND POLARIZATION OF SYNCHROTRON RADIATION A DETAILED DISCUSSION の"AND POLARIZATION"を省く。 p.175のFigure6.4について これは誤植ではないけれども、情報が少ないので、追加。 についての説明がないが、これはx-z平面上にあるものとして考えている。 p.176 (6.27b)式の右辺 となっているところを になおす。 Chap 7 p.200 式(7.15b)の1つ下の式の の を省く。 p.203 (7.23)式の2行目 となっているとこの、最右辺の を とする。 p.207 (7.28b)式の右辺の一番右の積分 を に。 p.209 (7.35a)式の を とする。 p.210 (7.38)式下の Eqs.(1.89a) and (1.89b). となっているところを Eqs.(1.90a) and (1.90b). とする。 p.211 l.9~10 Eqs.(1.96) を Eq.(1.97) に。 p.216 (7.61b)式 を とする。 Chap8 Chap9 p.239 (9.2)式 を に替える。 p.240 を にかえる。 p.252 (9.23)式下の角運動量lの定義がおかしいので、 に替えておく(テキストの方はlとvが太字)。 p.253 (9.26b)式の右辺 を にかえる。 p.257 (9.35b)式の右辺 を にかえる。 Chap 10 p.273 一番上の式および式(10.21)に出てくるをすべてに書き換える。 p.273 一番上の式の右辺 をにかえる。 (教科書でp_jはベクトルの太字) 同じくp.273 (10.21)式の最右辺のをにかえる。 10.3章全般について これは誤植ではないが、 10.3章で扱われているはupper stateからlower stateへの遷移を考えている。(10.2章では、はstate iからstate fへのtransition rateだったので、それとは添え字の意味が逆になっている) また、(10.32)式の下の文章でと書いてあることより、という定義であることがわかる。なのでよって、これとつじつまを合わせようと思うと、(10.30)式および(10.31)式のはとしておくべき(だと思う)。 p.280 (10.42a)式上の quantum numbers and を quantum numbers and にかえる。 p.289 (10.71)式下の文章1行目、単位の斜体をなおす。 Chap.11 p.303 (11.25)式下2行目をに。 また、(11.26)式の左辺をに。 Solutions p.367 4つめの式 を に。 それにともなって、下のの値も1/4倍する(実際、結論としてはどっちでもかわらないが)。 一般相対論入門 須藤 靖 著 相対論を概観するのに良い1冊。解説が簡潔で、スマートにまとまっていたように思う。問題が多く、解答もついていて、これが非常によい訓練になるし、面白い問題が多くて、(テンソル計算がつらいときもあるけれど、)やっていて楽しい。実際僕はこの本で初めて相対論を勉強したけれど、初めて相対論を学ぶ人にも良いかも。 5章はシュバルツシルトブラックホールについての基本的な物理状態がよくわかる。シュバルツシルト半径や、その物理的意味、inner most stable orbitの導出など、Black Holeの降着円盤を見る際の基本的な知識を学ぶことができる(個人的には5章が一番勉強になった)。 6章は宇宙論で、Einstein方程式からスタートして、宇宙を記述する方程式をいくつか紹介し、そこから今の宇宙が膨張していることなどを見ていく。 誤植は、須藤さんのページがある。 ここに載っていない誤植としては、 p.109 (5.114)式の左側の式の左辺 を にする。 p.163(A.4.32)式の最左辺 を、 とする。 UNIX シェル入門 シェルの基本がほどよいボリュームでまとまっている本。一度通して読んでみたが、個人的には多くの発展があったので、読み通すのもアリ。読み通した後は、基本は辞書のように用いるのがよいと思う。 今読んでいるもの 今、読んでいるもの。そのまんま。 Black-Hole Accretion Disks Shoji Kato,Jun Fukue,Shin Mineshige著。 読み始めたばかり。 今はChap2が終了. 以下、誤植 p.79 の脚注の式の左辺 を に。 p.466 (A.3)式の右辺 を にかえる。 宇宙流体力学 坂下 志郎, 池内 了 著 培風館 現在4章が終わったところ。 2章は流体の知識が非常に簡潔にまとまっている。 5章はまず、自己重力の式を作り、そこから典型的な重力しゅうしゅのタイムスケールを求めている。これを用いれば、たとえば星生成のタイムスケールや、超新星爆発の崩壊時間も、初期の密度さえわかればだいたい求まってしまう。 誤植一覧 第2章 p.13 (2.11)式の左辺第1項の$v$を太字に。 同様に、 (2.13)式の左辺第2項の$v$を太字に。 第3章 p.43の(3.38)式のをにかえる。 Astrophysics of Gaseous Nebulae and Active Galactic Nuclei Donald E. Osterbrock, Gary J. Ferland 著 3月末からゼミが継続中。 現在5章の途中。 このテキストもラジプロに負けず劣らず激しい誤植がたくさんある。 AGN×AGNの誤植一覧 Chap.1 Chap.2 p.18 3パラグラフ目の5行目 をに。 p.18 3パラグラフ目の途中式の を に。 p.25 Table2.2のを に。同様に、 を に p.28 (2.20)式の1行目最左辺のをになおす。 p.36 Figure 2.6の上図の右下のをに。 p.37 一番上の式 これは誤植ではないが、まぎらわしいので、 を などに替える。 そして、この式、括弧の大きさがなぜか途中でかわっているという不思議((2.31)式もやけど)。 (2.31)式の下 を を に。 Chap.4 Chap.5 p.109の(5.3)式の右辺の、分子の第2項の を にかえる。 p.118 (5.11)式の上4行目 the optical depth を the optical depth とする。 p.121 上から一つ目の式の右辺のをに。 上から二つ目の式の右辺のをに。 上から三つ目の式の真ん中 の、 を省く。 p.129 (5.16)式の上式の左辺 をにかえる。 (5.17)式の 右辺のをにかえる。 Data Reduction and Error Analysis for the Physical Sciences 2010年明けから自主ゼミをすることになった本。すざくファーストステップガイドに参考として、載っていた本だったので、読んでみるか、ということに。 1・2章あたりは高校生でやるような内容。 3章では、観測による誤差が、結果にどのように伝わるか、というPropagation of errorsの式を学び、具体的に数式にapplyするという様式。 4章はstandard deviationとstandard error(standard deviation of mean)について。実は非常に有用なわりには、今までしらなかった内容だったので、非常に勉強になった。 5章はMonte Carlo Technique. Pseudo-random numberの作成方法など。 全体的に、しょうもない誤植多し。 現在6章の本文が読み終わったところ。 本のページ。 正誤表 正誤表が全く充実していない(意味をなしていない)ことにびっくりした。 誤植一覧 ここでは、正誤表に載っていない誤植を載せています。 Chap 1 p.14 の一番下から2つめの式の右側2つの等式 を とする。 Chap 2 p.19下から4行目 を にかえる。 p.23 (2.9)式の を にかえる。 (2.9)式下2行目 を にかえる。 (2.10)式 の左辺 を にかえる。 p.24 式(2.12)の下1行目 をと替える。 (2.13)式の下 を、とする。 (2.13)式の下2行目 time interval を time interval にかえる。 Chap .3 p.41 (3.11)式の を、 にかえる。 p.44 (3.29)式左辺 をに。 p.45 (3.34)式左辺の をに。 p.46 (3.39)式左辺の をに。 p.49 EXERCISESの3.6.の、数式をに。 Chap 4 p.51の4.1のタイトルがMETHOD OF LEAST SQUARESとなっているが、METHOD OF LEAST SQUARESについては、ここではまったく触れていないような? p.52 (4.3)式のをに p.52 (4.6)式のの定義を、 からにかえる。これにともなって、(4.7),(4.8)式も符号を-から+にかえる。 p.61 (4.28)式 をになおす。 (4.28)式下のuncertainty in the mean を、になおす。 p.64 の説明の下1行目のfactorial function n!を、に。 p.65 Probability Distributionの説明の12行目のをに。 Chap 5 p.77上から9行目をに。 p.81 式(5.5)の下3行目をへ。 p.82 1行目のΔr and Δxをandへ。 (5.9)式の中にあるrをにかえる。 (5.11)式のをにかえる。 p.83 上から5行目のto find yをto find xに(でいいはず)。 p.85 (5.19)式下6行目のをに。 p.88 (5.26)式下1行目をに。 p.89 TABLE5.3の表のがずれている。。 p.90 (5.29)式の真ん中をにかえる。 (5.30)式下5行目のin Section4.3.をin Section 4.4.にかえる。 p.91 FIGURE 5.4の中に描かれているをに。 p.95 SUMMARYのTransformation integralにある式の左辺 を、とする。 Chap.6 p.105(6.10)式の一番下の左辺を にかえる。 p.109 (6.22)式上から3つめの を にかえる。 Chap.7 p.131 をに。 (7.39)式の一番上の最右辺 をに。